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【おすすめ漫画】「僕たちがやりました」はもっと評価されていい

移転しました。

僕たちがやりました」という漫画は、2015年から2017年まで「週刊ヤングマガジン」で連載された。完結済みで、全9巻。
2017年の7月にはテレビドラマ化され、けっこう話題になった。
僕もつい最近全巻読んだので、その感想を書こうと思う。
以下、物語の冒頭部だけネタバレあるけど、オチまでは書いてないから安心してくれ。


主人公は、「そこそこ」の幸せを願う、ごく平凡な高校生の「トビオ」(ただし、例によってイケメン)。

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↑「トビオ」。平凡だけどイケメンってなんか矛盾してる

 

彼の通う凡下(ぼけ)高校の道路一本挟んだすぐ隣には、問題児のDQNばかりが集まる矢波(やば)高校があり、矢波高の生徒に目を付けられないように毎日をひっそりと暮らしていた。
トビオは特にやりたいことや夢といったものはなく、放課後は友達の「マル」と「伊佐美」の3人で部室に集まり、お菓子を食べながらゲームをしたり漫画を読んだり、とにかくだらだらとした高校生活を送っている。

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↑「マル」。ある意味、本作で一番存在感があるキャラクターである。

 

 

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↑「伊佐美」。性獣でもある。

 


たいてい3人で過ごしているが、ちょくちょくこの高校のOBである「パイセン」が顔を出し、4人で遊ぶこともよくある。

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↑「パイセン」。先輩だからパイセンと呼ばれている。

 

パイセンは実家が地主の、いわゆるボンボンである。しかし、大金持ちではあるが友達は一人もおらず、家族とも疎遠であるため、毎日を孤独に過ごしている。その寂しさを紛らわすためにわざわざ卒業した学校まで出向いてトビオ達と遊んでいる。


いつものように4人で遊んだ後、マルはひょんなことがきっかけで矢波高の不良に絡まれてしまう。そこへパイセンが助けに入り、カネの力を駆使して一度はで見逃してもらえることができた。

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しかし、一度インネンをつけられた相手には徹底した制裁を加えないと気が済まなかったのか、マルは不良たちに拉致されてボコボコに殴られてしまう。
無残な友人の姿を見たトビオは、矢波高の生徒を「殺す」といって復讐を誓う。
しかし、本当に殺すつもりはもちろんなく、ちょっと矢波高の生徒に痛い目を合わせてやりたかっただけである。
そこでパイセンに相談し、爆竹を作ってもらうことになった。
4人は深夜に矢波高に集合し、こっそり忍び込んでこの爆竹を校舎の至る場所に設置した。爆竹はリモコン式になっており、スイッチを押すと起爆するよう仕掛けが施されている。パイセンけっこうすごい。

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翌日、昼休みに4人は屋上に集まって矢波高に仕掛けた爆竹を次々に爆発させた。普段威張り散らしていた矢波高の生徒は突然の爆発に慌て、その様子を起爆スイッチを押しながら屋上で見物していた4人は爆笑する。
確かに、いじめられっ子にとって、いじめっ子の情けない姿を見る時ほど気分爽快な瞬間はないだろう。しかも、自分たちがスイッチを押すたびに狼狽するのだから、気持ちよくて仕方がないはずだ。

 

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しかし・・・。


セットした爆竹の一つが爆発が校舎のガスボンベに引火し、大爆発を起こしてまう。
矢波高は火に覆われて一瞬で大惨事となり、逃げ惑う人、焼かれて苦しむ人などで地獄絵図のような状態になった。

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4人の顔は、さっきまでの笑顔がうそだったかのように蒼白になる。


そんなつもりはなかった。
ちょっと仕返しができればよかった。

 

しかし、死者を出してしまった。自分が仕掛けた爆竹を自分たちで起爆させ、その爆発が人の命を奪ってしまった。
トビオ達は自分達が人を殺してしまったことと、警察に捕まることの二重の恐怖を感じることになる。これまでの平凡な日常が一変し、4人の逃避生活が始まる。

 

以上が、単行本2巻までの内容をざっと説明したものだ。
この漫画の最大の魅力は何といってもその「リアルさ」だ。
この後の展開はカオスで、トビオは人を殺してしまった罪悪感に苦しむ。そしてなんとか償おうとする。伊佐美はこんな時でも、いやこんな時だからなのかセックスしか頭にない。そして、マルは美しい友情なんてクソ喰らえと言わんばかりに、裏切りや駆け引き、生々しい欲望をむき出しにする。逃避の軍資金として、3人は金持ちのパイセンからそれぞれまとまった金(100万ほど)を受け取るが、マルはトビオの金を盗んでしまう。盗んだ金は、主にソープランドで使用されていた。
おそらくこの漫画を読んでいて、読者が一番イラっとするのはマルだろう。
彼は自分の欲望を最優先するために平気で友人を利用し、最後には開き直るという救いようのないクズだ。

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しかし、マルや伊佐美のようなタイプの人間が実は最も多いのかもしれない。
ここまであからさまなクズではないにしても、実体のない、あるいはよくわからない友情よりも目先の欲望を満たしてくれる金や女の方が大事。
普段は良識ある大人の皮を被っているが、一皮剥ければ口先だのけの友情は脆く、結局は自分が一番かわいい。

 

ちょっと皮肉っぽく書いたけど、僕はこれはこれで人間の本当の姿の一つだと思う。
マルのようにどこまでも自分の欲望に正直だと、かえって清々しいものを感じる。
僕は美しい友情、純愛を描いた作品も好きだけど、同時に救いようがないほどの
人間のクズが登場する作品も好きである。

 

また、ラストは賛否両論あるけど、個人的には「アリ」だと思う。
けっこう救いがないんだけどね。僕は好きだな。


人間の汚い部分を見たくないという人にはあまりおすすめできないが、怖いもの見たさのようなもので、ついつい読んでしまう魅力がある。何度も言うけどこの作品で描かれている人間は、悪魔的な意味で純粋だからね。

このサイトで試し読みができる。

 

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