ド素人からプロのフィギュア原型師になるための4つのアドバイス
移転しました。
どーも。
悩める若者の味方、いぬがみです。
今回は、フィギュア原型師を目指している人向けの記事です。
フィギュア原型師とは
「フィギュア原型師」というのは、その名の通りフィギュアの原型を造る職人のことです。秋葉原でよく売っている精巧なフィギュアは、数年前までは職人さんが手作業で原型を造っていたんですよ。
その原型を元に、金型を作って工場で複製しています。
手作業で原型を作る人をアナログ原型師といいますが、最近では3Dモデリングソフトと3Dプリンターを使用する、「デジタル原型師」が主流です。
んで、僕は何者かというと「スカルプターズトライアウト」にデジタル原型師として合格した者です。
これは、グッドスマイルカンパニーとマックスファクトリーという二つのフィギュアメーカーが共同で主催している、プロの原型師になるための試験みたいなものです。
僕はこの試験に晴れて合格し、正社員として働くチャンスをもらったんですが、
諸事情により就職を辞退しました。
なぜかって?
人生には色々あるんや!
もし詳しく知りたいというモノ好きな方がいれば、こちらの記事を読んでください。
よって、プロとして働いていた期間は全くなく、プロ試験に合格しただけです。
まあそんな僕でも、「原型師になるにはこうしたらいいよー」と、初心者の方に偉そうに語るだけの資格は一応あると思うので、このように記事にまとめました。
前置きが長くなりましたが、僕が原型師のプロ試験に合格するために取り組んできたことを紹介します。
ちなみに僕の場合、全くの未経験から始めてから2年半ほどでプロになれました。
これから原型師を目指す方に、参考になれば幸いです。
プロになるための4つのアドバイス
その① 解剖学を徹底的に勉強せよ
いきなり偉そうなこと言っちゃいますが、何年経ってもプロの原型師になれない人って、解剖学を勉強していないからだと思います。
原型師は「人体」を作るんです。
だから当然、人体の骨格や筋肉の構造を把握しておく必要があります。
もう体中の骨や筋肉の名前を覚えるくらい勉強して下さい。
模写しまくって下さい。
まあこんな風に偉そうに語る僕も、駆け出しの頃は解剖学をすっ飛ばしてひたすら粘土をこねていましたが。
あ、僕は最初「アナログ原型師」を目指していたんですよ。途中からデジタルに逃げました。アナログは苦行過ぎるので(この記事に僕の全作品を公開しています)。
僕も含め初心者の方は、解剖学の勉強をないがしろにしがちです。
おそらく、美少女フィギュアの多くがデフォルメされたデザインであり、
これくらいなら俺でも作れそう!って思っちゃうからですかね。
・・・そう思うのは僕だけでしょうか。
すいません。
ひたすら粘土をこねたり、モデリングソフトをいじって「フィギュア造んの楽しー!!」って気持ち良くなってもいいんですが、解剖学の勉強も並行して行うとずっと効率がいいです。
僕は最初の1年くらい、解剖学をおろそかにしてずっと気持ち良くなっていただけなので、かなり遠回りしてしまいました。
解剖学を勉強するようになってからは、飛躍的に成長しました。
もっと早くから勉強しておけば、たぶんプロになるまでの時間を1年くらい短縮できたと思います。本当にもったいねぇ。
それほど、解剖学の勉強は重要です。
解剖学の学習では、以下の本が大変おすすめです。
ボーンデジタル (2016-11-26)
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勉強の仕方は、骨格や筋肉の成り立ちを覚え、模写することがおすすめです。
その② 造るキャラクターの下絵をたくさん描こう
これは造るキャラクターの研究をしっかり行うという意味です。
おそらくフィギュア造形をしている9割の人が、自分の好きなキャラクターを造っていると思います。
もちろん、そのキャラが登場するアニメ(漫画)は全話見ているし、性格や外見の特徴も把握しているでしょう。
しかし、いざ立体化しようと思ったらそれだけでは足りません。
そのキャラをラフスケッチでもいいので、紙に描くことをおすすめします。
どんな表情にしようか、どんなポーズが似合うかを考え、あらゆる角度からスケッチしていきます。この時、内側の骨格や筋肉も意識して描くと理想的です。
こうして、ある程度完成イメージができてから立体化すると、
スムーズに進み、完成度も高くなります。
さらに、立体化の作業に移ってからも、何度でも下絵を修正するといいでしょう。
いざキャラクターを立体化してポーズをつけてみても、
「あれ?なんかコレジャナイ感が・・・」
と思った経験はありませんか?
そうなったら、すぐに下絵の工程に戻りましょう。
下絵に戻らず、いつまでもごちゃごちゃ粘土やモデリングソフトをいじっていても収拾がつかず、無駄に時間だけが過ぎていきます(実体験済み)。
イチからポーズを考え直す必要はありませんが、一度冷静になって下絵に戻り、解剖学的知識を身に付けた上で修正していくと、ドツボにハマらずに済みます。
また、美少女フィギュアでは、躍動感を出すために多少無理のあるポーズをとらせたり、「いや、そこの関節そんな曲がらんだろ」ってくらい動したりするのは「あり」です。
どうしても「コレジャナイ感」が出てしまう時は、下絵に戻ってこういったことを意識して描いてみましょう。そうすれば、市販されているフィギュアに近づけますよ。
人物デッサンは以下の本がおすすめです。ちょっと絵が古いですが。
解剖学や質感の学習のためにも、 デッサンは大事ですよ。
美大の造形科の試験科目にも、デッサンはあります。
その③ プロの原型師の方に自分の作品を見てもらうべし
僕のように独学で、さらに友達や切磋琢磨できる仲間がいない場合(血涙)、自分の作品に自惚れがちです。
以下は、僕がフィギュアを始めてから1年ほど経ったときに造った作品で、ワンフェスに出展したものです。
本当に今考えるとドン引きなんですが、この作品でプロとして通用すると本気で思っていたんですよ。ですからワンフェス中、僕はずっとメーカーからスカウトが来ると思っていました。
信じられませんよね。僕も過去の僕が信じられません。自惚れって怖い。
結局、一つしか売れず、メーカーの方から名刺が渡されることはありませんでした。
ワンフェス中、ずっとウキウキしていた自分が恥ずかしい。
というか買ってくれた方、本当にありがとうございます。
こういった勘違いは、僕がバカだからっていうのも大きいですが、けっこう独学者は陥りやすいです。
その結果、自分の欠点に気付かないため、成長スピードを大幅に落としてしまいます。
これを防ぐには、レビューを受けるのが一番です。
友人や家族に見せてもお世辞を言われるだけなので、ちゃんと客観的な分析してもらえる人に見せましょう。
フィギュアの専門学校に通っている人はレビューしてもらえる環境が整っていますが、
そうでない人は、個人的にプロの方にコンタクトを取るといいでしょう。
今はSNSが普及しており、プロアマ問わずたくさんの人が自分の作品をアップしています。その中から、「この人スゲー!!」と感じた人に、思い切ってレビューをお願いしましょう。
大丈夫です。
フィギュア業界は優しい人ばかりです。オタクに悪人はいません(真実)。
無視されてしまったら、ご縁がなかったとあきらめましょう。上手い人はたくさんいるので安心してください。
中にはがっつりレビューしてくれる方もいて、本当に助かりました。
レビューしてもらうことで、自分に足りないところや課題点、そして目標が浮き彫りになっていきます。人に見てもらわず、あのまま独学を続けていたら間違いなく僕はプロになれませんでした。
例えば、この画像は僕が独学で造った作品です。ラブライブの園田海未というキャラクターです。
すごいね。「コレジャナイ感」が。
これはフィギュアを始めてから2年半くらいの作品です。
ちなみにこの時も、「俺はこんなに上手く造れるんだから面接通るやろ」と勘違いし、とあるメーカーにこの作品を含めたポートフォリオを提出しました。
結果、書類選考で撃沈。
人は過ちを繰り返す。
今考えれば「落ちて当然やろ」って感じだけど、当時はこの程度の実力でプロになれると本気で思っていましたからね・・・。
これが指導者不在の怖さよ。
それから、もう流石に独学の限界だと感じ、自分の作品をプロの方に見てもらいました。ありがたいことにがっつりレビューしていただき、そのレビューをもとに修正しました。こちらが第二形態です。
ちょっとはマシになりましたね。
ただ、違うアングルから見るとまだまだ硬さが残っています。数か月後、さらにレビューをしていただいて修正を加えたました。
以下が園田海未最終形態です。
この作品をスカルプターズトライアウトで提出したところ、合格できました(他にも違う作品を数点提出していますが)。
第一線で活躍しているプロの方の作品に比べたらまだまだですが、初心者の方にとっては「この程度の作品を造ることができれば、プロとして認めてもらえる」という一つの目安にはなると思います。
独学では絶対にここまでたどり着くことはできませんでした。
人に見てもらう機会は定期的に設けるようにしましょう。
その④ 今から原型師になりたいという人は、デジタル原型師を目指そう。
タイトル通りです。
以下の記事でアナログ原型師とデジタル原型師を比較し、
あらゆる点でデジタル原型師の方が有利であることを解説しています。
悪いことは言わん。
プライドやこだわりがないなら、絶対にデジタルの方がいいぞ。
求人母数が多く、安定して食っていけるのはデジタル原型師です。
これだけ3Dプリンターが普及し、IT技術が発達しているという時代を考えれば当然ですよね。
また、モデリングソフトを使用した方が成長スピード早く、作業効率も圧倒的に良いです。これ、超重要なことです。
詳細は紹介した記事内に書かれています。
モデリングソフトは、フィギュア業界では「Zbrush」というソフトが使われることが多いです。直感的な操作ができ、まるで画面上で粘土をこねるように作業を進めることができます。
お値段は10万ほど。3Dモデリングソフトの中では安い方らしいです。
ソフトの使い方については以下の本がおすすめです。
原型師になるには学校に通う必要はあるのか?
学校に通うか悩んでいる人が多いみたいですね。
繰り返しますが、僕はプロの方のレビューがなければ合格は不可能でした。
ただ、それは言い方を変えれば、「プロの方に見てもらえる機会があるなら、わざわざ
専門学校に通う必要はない」ともいえます。
もちろん、学校に通うメリットは他にも色々あります。
モチベーションを保ちやすいとか、就職情報を得やすいとか。
よって、お金と時間に余裕があるなら通った方がいいですが、必須ではないと思います。原型師は独学出身者もたくさんいますし。というか、独学の方が多い気がする。
まあこれは、僕自身が独学でプロになったという経験バイアスから、「学校に行く必要はないよ」と言っているだけなんですけどね笑
最後に
原型師という職業は、なるまでもなってからもかなりハードモードと言われています。
僕は「なってから」の経験はありませんが、話を聞く限りなかなかキツそうです。
ただ、「なるまで」の道のりは、アナログが主流だった時代に比べると少しは楽になっている気がします。
モデリングソフトと3Dプリンターの進化のおかげで発狂するような手作業から解放されたし、SNSの普及でプロの方と繋がりやすくなりました。
技術革新万歳。
こういった技術革新の恩恵を、最大限利用しましょう。
あと、くどいようですが解剖学はきちんと勉強しましょう。
そうすれば、別に特別な才能がなくても原型師になれますよ。
僕にでもなれたんですから。
なにか聞きたいことがありましたら、ツイッターで連絡してください。
あ、作品のレビューは無理です。すいません。もうずっと造っておらず、勘が鈍っているので、お役に立てません。
では、頑張ってください!