アナログ原型師は、今すぐにでもデジタル原型師に移行すべき
移転しました。
どーもー。
「3年かけてフィギュア原型師になれたけど就職を辞退して路頭に彷徨っているアホブロガー」こと、いぬがみです。(こちらのページで僕の全作品を紹介してます。)
今回の記事は、僕と同じようにフィギュア原型師を目指している人や、既に原型師として活躍している人に是非読んでほしいです。
「フィギュア原型師ってなんやねん」って人も、何かしら参考になる部分があると思うので読んでほしい。
要するにみんなに読んでほしい。
では、行きましょう。
「フィギュア原型師」とは?
えっと、「フィギュア」は知ってますよね?秋葉原とかに行けばたくさんあります。
主にアニメやゲーム、マンガのキャラクターを立体化したものです。
こんな感じ。
※僕の作品ではありません
仕事の流れですが、まずメーカー等からの依頼で、原型師と呼ばれる方が大量生産の元となるフィギュアの「原型」を作ります。
そこから、その原型を元に金型を作り、金型に材料を流し込んでパーツを作り、一つ一つ塗装して組み立ててから店頭に並びます。
簡単な説明ですが、以上が一般的なフィギュアの製作工程です。
原型師っていうのは、フィギュアの元となるものを作る人ってことです。ちなみに塗装する人を「フィニッシャー」って呼んだりします。
そして、原型師には大きく2種類あります。
アナログ原型師とデジタル原型師です。
アナログ原型師?
アナログ原型師とは、専用の粘土や「パテ」と呼ばれる材料を使って、手作業でフィギュアの原型を作る人です。
粘土みたいなのをこねながら、それを盛ったり削ったりしながら地道に仕上げていく感じです。
僕も最初、フィギュア作りはアナログから入ったけど、地道過ぎて死ねます。
デジタル原型師って?
もう一方のデジタル原型師とは、3Dプリンターの普及に伴って最近になってから登場したものです。フィギュア業界では、主に「Zbrush」(ズィーブラシ)というモデリング
ソフトが使用されています。
「Zbrush」でキャラクターを作り、そのデータを3Dプリンターに転送して立体出力します。立体出力してから大量生産するまでの工程はアナログの原型師と同じです。
というのも、3Dプリンターを使って出力してそのまま売り出せる状態で出力されるわけではないんです。
出力後は表面をきれいに磨き、そこから金型を作ってから一つ一つ塗装していく必要が
あるんです。これは完全に手作業です。
ここまで読んでだいたいイメージはつかめましたかね・・・?
デジタル造形の効率良すぎワロタ
勘がいい人はお気づきかと思いますが、作業効率は圧倒的にデジタル原型師が上です。
ぼくはアナログとデジタル両方経験がありますが、もう雲泥の差ですよ。
体感ですが、デジタルのほうが10倍、いやもしかしたら20倍以上速いスピードで作れます。しかもきれい、かつ正確に。
作るものによって変わってきますが、まあとにかくデジタルのほうが圧倒的に効率がいいってことです。
その証拠に、最近のフィギュアはほとんどデジタルで作られたものですし、原型師の求人情報を調べてもアナログよりデジタルのほうが多くなっています。
アナログ作業は「地獄」
例えば、フィギュアで顔を作るとします。顔って左右対称ですよね?
アナログの場合、頭部の右側と左側を、粘土を盛ったりヤスリで削ったりしながら作っていきます。
ちゃんと左右対処になるように、細かく長さや奥行きを図りながらミリ単位で削ったり盛ったりして地道に進めていきます。
この作業は僕も経験がありますが、正直いって気が狂います。
顔全体の大きさだけでなく、目の大きさ、角度、奥行き、あごのライン、口の大きさ、角度・・・などなど、全て左右対象にしなければなりません。
想像するだけで気が狂いそうですが、実際にやると冗談抜きで死にそうになります。
精神的にも肉体的にも壊れます。実際に僕病んでましたし。
まあだから途中でデジタルに移行したんですが。
さらにメーカーからの修正依頼で、例えば「頭部をもう一回り大きくしてほしい」なんて言われたら、また気の狂う微調整をしなければなりません。
発狂するわ。
しかし、デジタルの場合こういった気の狂うような長時間作業は必要ありません。
主にフィギュア業界で使われている3Dモデリングソフトは「ZBrush」ってやつなんですが、これには大変便利な機能がたくさんついています。
その一つが「シンメトリーモード」です。
このシンメトリーモードってやつを使うと自動的に左右対称にすることができるんですよ!奥さん!
デジタル造形の効率の良さを画像付きで紹介
イメージしやすいように簡単にデジタルの説明をします。
まず球体を読み込みます。
この球体をいろいろ調整しながら頭部を作っていくんですが、まず「シンメトリモード」を使わない場合は以下のようになります。
まあこれはテキトーに盛っただけなんですが。
そして、「シンメトリモード」を使うと・・・
完全に左右対称になっていることがおわかりいただけただろうか。
上記の画像は、僕は球体の右側しか手を加えていません。シンメトリーモードをオンにしている状態だと、もう片方(左側)にも自動的に同じ効果が反映されます。
まあ動画などで確認してもらえるとすぐにわかると思うんですが、要するに片方(右or左)だけ作っていれば、もう片方(左or右)も自動的に同じように出来上がるということです。
もちろん、顔だけでなく体を作る場合も同じ要領で進めることができます。
これがどんなにすごいことかわかりますか・・・?
極端な話、作業時間が半分になるんですよ。
顔を作りたかったら、顔の半分だけ手を加えればいいんです。もう半分は勝手に反映されますから。機械のやることなんで、人間がやるより正確な左右対称です。
もちろん、完成した作品はデータとして保存できるので、新しくフィギュアを作る際にも使いまわすことが可能です。
僕は主に体、頭、手を使いまわしてますね。そこから作りたいフィギュアのポーズに合わせて微調整を加えています。
さらに、サイズの変更も簡単にできます。体に対して顔が大きさのバランスが悪いと感じたら、簡単に全体を大きくしたり小さくしたりできます。2,3秒でできますね。
アナログの場合ですと、人によりますがだいたい1時間くらいかかっちゃいます。
ポーズや指の曲げ方を変えることも簡単にできます。どう変えるかにもよりますが、だいたい3分くらいで終わります。
まだまだここでは説明しきれないほど便利な機能がたくさんあります。
デジタルはアナログに比べて、圧倒的にきれいに、速く、正確なシンメトリーで仕上げることができるってことです。
なので、アナログ原型師は近いうちに仕事がなくなる可能性が非常に高いです。
3Dプリンターの性能もどんどんよくなってますしね。
わざわざ時間のかかるアナログ原型師に仕事を頼む必要はないわけです。
アナログ造形に命をかけている人へ
とはいえ、アナログ原型師の人もプライドやポリシー、こだわりがあるでしょう。
粘土をこねたくてアナログ原型師になった人、または目指している人も多いでしょう。
僕もそうでした。
そういう人は、自分にしかできない造形を目指すべきだと思います。
自分の価値を高めるというか、自分じゃないと生み出せないものを作る必要があります。それができるようになると、今後もなんとか食っていけるんじゃないかと。
ただし、こっちは茨の道です。造形に生涯をかけるくらいの覚悟が必要です。
成長のためにも、いずれにせよ 「Zbrush」は必要
とはいえ、そういった造形家を目指す場合でも、やっぱり「Zbrush」は必要だと思います。「Zbrush」は単に作業効率がいいだけでなく、成長速度も上がりますから。
自画自賛ですが、実際に僕も「Zbrush」を使い始めてから急な成長を感じます。アナログでは亀のようにトロトロと成長してましたが、デジタルに移行してからウサギのように疾走するかのように成長していると思います。たぶん。
明らかに「Zbrush」を使って練習したほうが、解剖学的知識が深まり、観察眼が鍛えられるんですよね。
デジタルに比べて粘土を使ったアナログ作業は、いちいち無駄な時間かかりますから、その分成長速度も遅いんです。
だから、まあいずれにせよ、結局3Dモデリングソフトは使いこなせるようにしておくべきというのが僕の意見です。
こちらが、僕が大変お世話になったモデリングソフトの教科書。
参考になれば幸いです。